『 初春の 』
その闘いは 凄惨を極めた。
サイボーグたちは もちろん博士も一緒の総力戦となり
全員が はっきりいって死にもの狂いで闘った。
誰もが自分自身の能力を超えて闘い ― いや 生き残るために誰もが
全力でコトに当たらなければならかった。
どのくらいの時間、 いや 日数が掛かったのだろう ・・・
ゼロゼロ・ナンバーサイボーグたちは 辛くも生き残ることができた。
戦闘に 勝った とか 負けた とか 誰ももうわからなかった。
なんとかともかく 一人も欠けることなくともかく生命を保ち戦線から離れられた。
「 発進するぜ ・・・ 皆 しっかりつかまってろ〜〜〜〜 」
ジェットは ドルフィン号のメイン・パイロット席に自身を放り込むと
全てのエンジン・ブレーキを一気にオフにした。
「 おう ・・・ 」
「 うう ・・・ 」
「 博士・・・ 大丈夫ですか 」
「 大丈夫だ。 皆 無事だな? 」
「 う〜 無事っていえるかどうか ― ま 死んじゃいませんぜ 」
「 ワイも や で 」
「 おし! フラン、 ジョーのヤツをしっかり押さえとけ〜〜 」
「 ・・・ わかったわっ 」
「 ど ドルフィン〜〜 発進っ 」
ガクン ガクン 〜〜〜 バッシュ 〜〜〜〜
数回 大きく全身をゆらすと ドルフィン号は 水面を蹴り飛び立った。
はあ ・・・ ほう ・・・・ ふ〜〜〜〜
ため息とも ひそやかな悲鳴とも いえる響きがコクピットの中に満ちた。
「 ぼ ぼくが ・・・ 操縦を 」
「 だめっ! ジョー 安静にしててっ ! 」
「 ジョー。 動かない、という約束でコクピットに居ることを許可したのじゃぞ。
じっとしておらないなら医療カプセルに戻す 」
「 ・・・ で でも 」
「 でも じゃないでしょう? ほら ・・・ 」
フランソワーズは シートベルトを二重に彼の身体にかけた。
「 う ・・・ 」
「 これが負担に思えるなら カプセルに逆もどりよ? 」
「 ・・・ わ かったよ ・・・ 」
「 さあ 帰りましょう! わたし達の 家 へ ・・・ ! 」
おう ・・・ ! 声にならない声が響き合う。
数度 ガタガタ揺れた後 ― ゴ −−−−−−−−−− ・・・
ドルフィンは 安定飛行に移った。
「 ・・・ ふ〜〜〜〜〜 」
パイロット席から特大のため息が聞こえた。
「 ジェット。 オート・フライト にして医務室に来い。 」
博士がまっ先に立ち上がった。
「 はあ? オレなら なんともないぜ 」
「 いいや。 燃料系に異常があるじゃろ? 今のうちに直す。 」
「 ・・・ なんでわかんだよ 」
「 いいから 来るのじゃ。 」
「 ・・・ ちぇ 〜〜 」
ガッタン。 のっぽの赤毛はまったく < いつも通り > な風に
無造作に立ち上がった が。
がくん。 長身が大きく揺れた。
「 ! ・・・ 」
「 それみろ。 ジェロニモ・・・ ちょいとこのイタズラ坊主を捕まえいってくれ。
「 おう。 」
巨躯の仲間は 軽々とジェットを抱えあげた。
「 ! やめろ〜〜 」
「 大人しくしたら やめる 」
「 ・・・ったよ。 脚 ・・・ 動かねんだ。 肩 貸してくれ 」
「 わかった。 」
「 早く運んでくれ。 準備を整えておく。 」
博士が横っとびにコクピットから飛び出していった。
「 博士〜〜〜 僕 助手しますよ〜〜 」
ピュンマが慌てて後を追う。
「 ― 後は任せろ。 」
「 たのんだよぉ アルベルトぉ〜〜 」
ピュンマの声が廊下に消えてゆく。
「 006、007。 計器チェック任せるぞ。 」
「 はいナ 」
「 おう! 」
「 003。 009を押さえつつですまんが レーダー 頼む 」
「 了解。 任せて! 」
「 よし。 それじゃ俺達の 家 目指して ― 加速するぞっ 」
アルベルトは パイロット席に身体をすべりこませた。
ちゅん ちゅん ちゅん ・・・
明るい陽射しのもと、スズメたちが賑やかに跳ねまわっている。
崖の上のギルモア邸は ― 無事だった。
前日の深夜 ドルフィン号は崖下の格納庫になんとか滑り込んだ。
がっくんっ !! シュ〜〜〜〜〜〜〜 ・・・・
「 ・・・ は ・・・ なんとか格納した ぞ 」
「 よ かったわ ・・・ 皆 大丈夫? 」
「 はへ〜〜〜 アルベルトはん、 ちょいと荒っぽい操縦やなあ 」
「 悪いな。 操縦は俺の専門外 」
「 よくやってくれた。 博士 大丈夫か? 」
ジェロニモ Jr. は 身をもって庇っていた博士に声をかけた。
「 う うむ ・・・ ま ちょいと暴走気味じゃったが よくやったぞ 」
「 すいませんね。 怪我なんぞしてないでしょうね? 」
「 うむ ・・・ あちこち青痣はできそうじゃが なんとか無事のようじゃ 」
「 よかった。 さあ〜〜 < 家 > に戻るぞ!
まずは ― 怪我人どもを地下のラボに移そう。
」
「 頼む。 あ〜〜 まずは飛び屋クンからじゃ。 」
「 俺、運ぶ。 ジェットは軽い。 」
「 お〜 任せるぞ ・・・ あ フランソワーズ、ジョーのヤツは? 」
「 し〜〜〜〜 ・・・ 眠ってるの。 」
「 そうか。 ヤツも疲れているんだな 」
「 うふふ〜〜 そうじゃなくて どんなに言ってもちっとも大人しくしていないから・・・
お砂糖をた〜〜っぷりいれたホット・ミルクに 一服盛ったの♪ 」
「 げ★ ・・・ げにオンナは恐ろしい・・・ 」
ピュンマが大仰に両手を上げた。
「 だあって! 安静にしてなくちゃダメって何回言っても全然言うコト
聞かないんですもの。 早く回復するためには 安静第一、でしょ 」
「 まあ そうだけどね。 じゃ 寝てる御仁は僕が運ぶよ。 」
「 ピュンマ、頼む。 おい フランソワーズ? お前は大丈夫なのか?
ずっと 目も耳も全開だろう? お前も疲労困憊のはずだ。 」
「 あら 平気よ? わたしを誰だと思っているの? 003よ? 」
「 わかってる。 ・・・ ん? 」
「 ・・・・・・ 」
ピュンマにジョーを頼み、 ちょっと一息、と腰を下ろした途端 ―
003は カクン ・・・と 寝入ってしまった。
「 ほ〜らみろ 」
「 あっは。 それではマドモアゼルは吾輩が丁重にお連れしよう 」
「 ほっほ〜〜〜 ほな ワテは一足先におウチに戻って ― お御馳走の
準備や。 みなはん〜 今晩は新鮮な野菜とあっつあつオカズさんでっせ〜〜
楽しみにしてなはれ〜〜〜 」
フランソワーズを お姫さま抱っこしたグレートに付いて
張料理人は ドルフィン号から転がるように厨房をめざしていった。
「 ふ ん ・・・ さて 俺は最終チェックをして上陸する か
・・・ ? う ん ・・?? 」
ガクリ。 一瞬、 アルベルトは膝を突いてしまった。
「 な なんだ?? 滑った ・・ か? 」
「 お前さんも精密メンテが必要だな 」
「 ? 博士? 先に上陸したんじゃ・・・? 」
「 ふふん。 イチバンの問題児を放ってはおけんよ。
司令塔兼最前線で 働き詰めだったじゃないか。 破損個所も並ではないな 」
「 そ そんなことないですよ 」
「 いや。 ワシのこの目は節穴ではないぞ。
さあ ― お前さんもメンテ・ルームへ直行だ。 」
「 ・・・・ 」
この気難しい独逸人は 珍しく一言も反論せずに大人しく博士に従った。
シャ −−−−−−−−−
「 わあ〜〜〜 眩しいわあ 〜〜〜 」
リビングのカーテンを開け フランソワーズは眼を瞬いた。
昨夜、というか 昨日は宵の口にベッドに入った ― いや 担ぎこまれた?
といってもいいかもしれない。
グレートがベッド・サイドに立ち なにかもしゃもしゃ言っていたのは覚えているが
それ以降は まったく記憶がない。
とにかく 滾々と ただただ眠った。
今回のミッションで 彼女は大きな傷を負うとかの身体への損傷はなかった。
しかし 戦闘中全ての情報を傍受していた、その神経への負担は
彼女のキャパシティーを遥かに超えていた。
そのことは十分わかっていたが < 耳 > も < 眼 > も 閉じる
ことはできない。 そんなことをしたら ― 自分たちは全滅してしまうのだ。
その結果 ― 疲れ果て ぷつり、と意識の糸は切れてしまった。
そんな003の回復方法は 睡眠。 ただ ただ 眠ること だったのだ。
翌朝 ― 日の出はもう少し前だったらしい。
ものすごくすっきりした気分で フランソワーズは目覚めたのだ。
「 う〜〜ん ・・・ あ〜〜〜 よく寝たわあ ・・・
皆は ・・・ ああ まだメンテ中か爆睡中 ね。
では 最高にオイシイ朝ご飯を用意しようかしらね 」
彼女はにこにこと身支度を整えると 階下へと降りていった。
― リビングには 案の定、誰もいなかった。
「 さ ・・ 空気をいれかえて・・っと。
お庭の花壇や木は 元気かしら ・・・
」
カーテンを開け窓を全開し ― 空気をいれかえた。
そのついでに テラスから庭サンダルをつっかけ 庭先に出てみた。
カサ カサ カサ ・・・
足元には枯葉やら枯草がからまってくる。
「 あらら ・・・ そうねえ ・・・ 枝の剪定やお掃除もできなかったものね
花壇は あ〜あ 草ぼうぼう ・・・ あら ? 」
チョン チョン チョキン
テラスの南側から 剪定挟の音が聞こえてきた。
フランソワーズは そちらに回ってみた。
「 ? まあ 博士! おはようございます 」
「 うん? おお フランソワーズ ・・・ すっきり目覚めたかな? 」
「 はい。 た〜〜〜くさん眠りましたから ほら こんなに元気です 」
「 それはよかった・・・ 睡眠は最良のクスリ だからなあ 」
「 博士は? ずっと皆のメンテをなさっていたのでしょう? 」
「 まあ な。 一区切りついたので ちょいと庭を眺めていたら
・・・ コイツらのことを思い出してな
」
博士は 手元に置いていた鉢物を差し出した。
「 あ 盆栽? 」
「 左様。 ほっぽっておいたからなあ 」
「 ・・・・ 」
コズミ博士の影響で 博士も盆栽にのめりこみ、 南側のテラスに
盆栽棚をつくり 松だの梅だの を育てていた。
今回の < 外出 > の際、丹精していたた盆栽の中、秘蔵のものは
コズミ博士に預けてあった。
しかし 大半はそのままにしておかなければならなかった ・・
ならんでいる鉢には 枯れた色が多かった。
「 枯れてしまいました・・・? 」
「 うむ・・・ 申し訳なかったよ ・・・ せめて庭に下ろておけばなあ 」
「 ・・・ 余裕、なかったですもの 」
「 そうなのだが ・・・ふう ・・・ なんとか半分は大丈夫だったが
ま〜好き勝手に枝を 伸ばしておったよ 」
「 あらあら またお手入れがたいへんですわね 」
「 うん ・・・ まあ あれはあれでいいか、と思うんじゃ。
自由に生きるのも よし、とね。 無理に手をいれる必要もあるまい 」
「 ええ ええ ・・・ 門の側の夏ミカンも実がたくさん生ってます。
すご〜〜くすっぱいんですけど シトロン・プレッセ みたいにすると
美味しいんです。 自然のままの味で ・・・ 」
「 そうか 今度ご馳走になろうかな 」
「 ええ 是非。 」
「 ― 体調は 大丈夫かね? 」
「 はい。 ・・・ふふ ・・・ しっかりたくさん寝ましたから
あの ・・・ 皆は? 」
「 安心をし。 ジョーはしっかりメンテしておいたぞ。 まあ しばらくは
新しい部分との違和感があるだろうがな 」
「 そうですか よかった・・・! あ あのジェットやアルベルトは 」
「 アルベルトはしばらく医療カプセルだな。 無茶しおって ・・・ 」
「 え ・・・ そんなに・・・? 」
「 この際 徹底したメンテナンスじゃ。 いいチャンスだと思う。
ジェットは ― 新しいパーツが手元に届いてからだ。 」
「 え ・・・ 」
「 ま〜 しばらくは飛べないが その方が周りも安心じゃろ。
大丈夫、ちと大人しくしていてもらえばいいだけじゃ。 」
「 あらあ・・・ それは一番難しいかも ・・・ 」
「 だ な 」
「 博士! 博士のことが一番心配ですわ。
帰ってから お疲れなのにず〜〜っとメンテナンスに かかり切りで 」
「 ふ・・・ 少し疲れたが ・・・ なに、ちょいと休めば
」
「 ダメです。 そうだわ、とびきり美味しい朝ご飯を用意します。
どうぞ召しあがってからゆ〜〜っくりお休みくださいな?
ほら お部屋には冬の光がいっぱいです。 」
「 おお そうじゃなあ ・・・ ではそうするか ・・・ 」
「 ええ ええ。 あ 朝ごはんの前に 朝風呂はいかが?
さっぱりしますしお疲れも取れます。 」
「 はは ・・・ 朝寝朝酒朝湯かい?
ははは 身上 ( しんしょう )潰すなあ〜 」
「 ??? 」
「 いや ・・ あとでジョーにでも聞いてごらん?
それじゃ ・・・ ちょいとひと風呂浴びてこようか ・・・ 」
「 どうぞ〜〜 熱々の朝ご飯を用意しておきますから 」
「 ありがとう よ 」
博士は 彼女の頬にちょっと手を当ててからゆっくりと室内に戻っていった。
「 あ〜〜〜 ・・・ 本当に気持ちのいい朝ねえ ・・・
ふふふ たっくさん寝たからもう最高にいい気持ち 」
フランソワーズはもう一回 大きく伸びをすると庭に降りていった。
芝生の上には枯葉やら枯草がいっぱいで その芝自体伸び放題だ。
「 あ〜〜 ・・・ またやりなおし ねえ ・・・ でも いいわ。
春が来る前に手入れを始めましょ。 花壇も ・・・ あ〜あ ・・・
今から種をまいて春に咲く花ってなにかなあ 」
草ぼうぼうの花壇の前であれこれ思いを巡らせる。
「 大変だけど 楽しみよね。 まずはお水を上げましょうか・・・ あら? 」
水撒きの準備を、とテラスに戻ろうとして フランソワーズは立ち止まった。
カラリ。 テラスのサッシが開き ― ジョーが出てきた。
「 ! ジョー !! なにやってるの?? まだ起きちゃだめでしょう?? 」
「 ・・・ や あ フランソワーズ ・・・ 」
「 やあ じゃないわよ! メンテ、終わったばかりなのよ?
ちゃんとベッドに入っていて 」
「 ・・・ 大丈夫。 ちょっとやりたいことが あるんだ 」
ジョーはパーカーのジッパーを引き上げた。
「 ちょっと寒い ね? 」
彼は両手で自分自身の腕をこすっている。
サイボーグなのに? 今朝の気温、寒いなんてレベルじゃないのに
・・・ あ。
「 ジョー。 まだ体温調節機能が馴染んでいないのね 」
「 ・・・ え そうなの かな そのうち慣れるよ ・・・ 」
「 ええ ええ だからそれまで静かにしていて? ね? 」
「 動いていた方が いいんだ ・・・ それに やらなくちゃならないことも
あるし ・・・ 」
「 やらなくちゃならないこと? あ ・・・ ほら 中に戻りましょ? 」
「 う ん ・・・ 」
彼女に促され ジョーはゆっくりとリビングに戻った。
「 ねえ なにをやりたいの? わたしが代わりにするから 」
「 え ・・・? 」
「 ジョー あなたは休んでいて? わたし、元気になったからあなたの代わりが
できるわ。 ねえ なにをしたいの? 買い物とか? 」
「 え ・・・ うん あの ・・・ 掃除 しようとおもって 」
「 掃除??? ・・・ ああ そうねえ しばらく留守にしていたもの、
ホコリだらけよねえ ・・・ 今 庭を見てたんだけど も〜ゴミだらけよ。
大丈夫、 少しづつやってゆくから。 安心して寝てて? 」
「 う ん ・・・ でも はやくやらなくちゃ 」
「 なぜ? 」
「 だって ほら 」
ジョーは 壁のカレンダーをさした。
それは今朝 フランソワーズが新しく貼り直したものだ。
そう ・・・ ミッションに翻弄されている間に 彼らがぼろぼろになって闘っていた間に
クリスマスは過ぎ新しい年になっていた。
「 もう新しい年 になっちゃったんだろ? 」
「 え ええ そうねえ。 ふふふ クリスマスも大晦日もすぎちゃった 」
「 だから さ。 やらなくちゃならないんだ。 」
「 なにを ?
」
「 クリスマスを迎えて 新しい年を迎える準備さ。 」
「 え ・・・だってもう過ぎちゃったから 」
「 過ぎちゃったけど ― 新しい年は来たんだもの、皆で迎えなくちゃ。 」
「 ジョーは なにをしたいの? 」
「 えへ ・・・ トクベツなことじゃないよ〜 普通の ほら 新年を迎える準備 さ。
今まで毎年やってただろ? 」
「 ・・・ つまり 大掃除したり えっと・・・あの あれ・・・
そう かどまつ を準備したり あのちょっとづついろいろなお料理を作ったりすること?」
「 うん。 ま〜 門松は もう時期がすぎちゃったけど ・・・
掃除とかしたいんだ。 ウチの < 去年 > を すっきりさせたいなあ って」
「 あら それ、いいわね! < 去年 > を掃き出して < 新しい年 >
を迎えましょうか 」
「 ね! だから ぼくも掃除をするよ 」
「 ああ いいの いいの〜〜 ジョーはしばらく休んでいて?
わたしがやるから 」
「 ぼくはもう大丈夫だよ 」
「 だめ。 博士からちゃんとオッケーがでるまでは 〜〜〜 」
「 でも きみ一人じゃ 」
「 僕もやるってば 」
テラスから元気な声がかかり 二人は同時に振り返った。
「 ?? ピュンマ?? 」
「 ただいま〜〜 いや おはよう、 が先かな 」
「 お帰り・・・ え あれ?? なんか濡れてないかい? 」
「 ホント。 あ〜〜〜 泳いできたのぉ?? 」
「 あは 当たり〜〜 ちょいとさ、ここの海が懐かしくてね ・・・
夜明け前に潜ってきたんだ 」
「 うへえ〜〜 」
「 ・・・ 寒くないの?? 」
「 え〜〜 僕、008 だぜ? ここの温暖な海は最高さ。
それでさ〜〜 ほら お土産。 」
どさ。 テラスに水が滴る網袋が置かれた。
「 これ・・・ なあに。 海の匂いがするけど ・・・巻貝? 」
「 あ〜〜〜 サザエだろ? すっげ〜〜〜〜 」
「 お〜〜 さすがジョーだね〜〜 あ 密漁じゃないぜ?
うん ちゃんと地元の漁師さん達の 手伝いをして頂いたんだから 安心してくれよ。
ふふふ・・・ 潜って息が続かないフリするの、結構大変だった〜〜 」
「 大丈夫、我らが密猟取り締まり官がそんなこと、するわけないもん。
ね〜〜 これさ 壺焼とかにしようよ 超〜〜〜 美味いぜぇ 」
「 これ ・・・ 貝 なの? 」
「 そうさ。 このいぼいぼな貝の中身が激ウマなんだ。
あは ぼく なんかすごく元気になってきた !
」
「 おいおい だからって掃除はまだ無理だって。 僕らでやるよ。
えっと ・・・ 飛び屋の大将には屋根とか窓拭きをやってもらうし
僕とジェロニモ Jr.と え〜と 某名優氏も手伝ってもらうさ。 」
「 でも ・・・ 」
「 あら いいわね! それじゃ わたし、ウチの名シェフと一緒に
あのお正月のお料理、作るわ。 ほら 甘くて美味しいマロンとか
あま〜〜いロール・卵焼き なんかのはいってるの! 」
「 ― お節料理 っていうんだ 」
「 そう! そのオセチ。 作るから〜〜 楽しみにしてて 」
「 ぼくは ・・・ ぼくもなにかしたいんだ 」
「 う〜〜ん ・・・ それじゃ ・・・ あ ニューイヤーカード!
あれを書いてくれるかなあ〜 ちょっと遅くなっちゃったけど・・・
コズミ先生や ほら ぼくらお互いに出しあってもいいし 」
「 年賀状 だろ? そっか〜〜〜 じゃあ芋バンで作るかなあ 」
「 そうよ お願いね? それなら静かにしていられるでしょう? 」
「 うん ・・・ でもね 動いた方が身体が新しい部分と馴染むんだ。 」
「 わかったよ〜〜 まずはね その < ねんがじょう > を頼む。
それがジョーの仕事さ 」
「 うん わかった。 」
ジョーは やっと笑顔を見せた。
「 ここで リビングで作業していいかな? 皆と居たいんだ 」
「 どうぞ〜〜 ふふふ 掃除のジャマ〜〜 とか言われそうだけど 」
「 あは その方が楽しいさ。 え〜と どんな図案にするかなあ 」
彼はあり合わせの紙に絵というか 図を書きだした。
「 なあに? ・・・ わんちゃん? 」
フランソワーズが覗きこむ。
「 そ。 今年は戌年だからね 」
「 いぬどし?? わんちゃんの年なの?? 」
「 ウン。 来年は え〜と・・・ いぬ い だから イノシシ年 さ 」
「 イノシシ??? なあに それ?? ピュンマ 知ってる? 」
「 いいや ・・・ 二ホンは本当に神秘な国だなあ 」
ジョーはひとり、ほんわり笑っている。
ああ ・・・ ジョーのこの笑顔 ・・・ !
じんわり滲んできた涙を フランソワーズはこそっと拭った。
「 あ ねえ? でも どうして? 」
「 ? なにが。 」
「 だから その・・・ どうして新年の準備に拘るの 」
「 普通に暮らしたいな〜って。 ぼくたち 普通のニンゲンとして生きるんだもの。
だから 新しい年をきちんと迎えたいなって・・・ 」
「 ― そうだね! うん 本当にそうだよね 」
ピュンマが 大きく頷いた。
「 なあ 皆が < 普通 > になったら 全員で日の出を見ようよ? 」
「 あ それいいなあ〜 えへ 大分遅れた初日の出 だけど ・・・ 」
「 あら いいじゃない? わたし達だけの 初日の出 ですもん 」
「 そうだね 」
「 じゃ そのためにも大人しくして ― 早く < 普通 > になってね 」
「 へいへい 〜〜 」
― そして ある払暁。 ギルモア邸の建つ崖に彼らの姿があった。
わあ〜〜〜〜 お日様だあ 〜〜〜〜〜
ウチに 新年を迎えられたね そうね そうだねえ そうだなあ
あけまして おめでとう !
********************************* Fin.
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Last updated : 01,09,2018.
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********** ひと言 ********
新年向きの 小噺です。 原作 でも 平ゼロ でも。
RE や コゼロ のキャラじゃあないですな (^◇^)
今年もどうぞよろしくお願い申し上げます <m(__)m>